2026年頃の適用開始が予定されている新リース会計基準。これまで簿外処理が可能だったオペレーティングリースも原則として資産・負債計上が求められるため、経理実務や財務諸表への影響は甚大です。何から手をつければよいかお悩みの担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、新基準の概要から、実務でやるべき5つのステップ、具体的な仕訳例、簡便的な取扱いまでを網羅的に解説します。結論として、新基準への対応を成功させる鍵は、対象となるリース契約を早期に網羅的に把握し、システムなどを活用して効率的に影響額を試算することです。この記事を読めば、複雑な新基準への具体的な対応策が明確になり、スムーズな移行準備を進めることができます。
新リース会計基準とは 2026年からの変更点を押さえよう
2024年5月に企業会計基準委員会(ASBJ)から公開草案が公表された「新リース会計基準」は、企業の経理実務に大きな変革をもたらします。これまで費用処理が可能であったオペレーティング・リースについても、原則としてすべてのリース取引を資産・負債として貸借対照表(B/S)に計上することが求められるようになるためです。これは、国際的な会計基準との整合性を図り、財務報告の透明性を高めることを目的としています。本章では、この新リース会計基準の基本的な概要と、適用に向けた第一歩として押さえておくべきポイントを解説します。
新リース会計基準が導入される背景と目的
今回のリース会計基準の改正は、単なる国内のルール変更ではありません。その背景には、グローバルな会計基準の潮流と、より実態に即した財務報告への要請があります。
最大の背景は、国際的な会計基準であるIFRS第16号「リース」や米国会計基準とのコンバージェンス(収斂)です。これまで日本の会計基準では、リース取引を「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分類し、後者は賃貸借処理(オフバランス処理)が認められていました。しかし、IFRSや米国基準ではすでに、使用する権利を持つリースを原則すべて資産・負債として計上する会計処理が導入されています。この差異は、グローバルに事業を展開する企業の財務諸表の比較可能性を損なう要因となっていました。
この国際的な動向を踏まえ、新リース会計基準は主に以下の3つの目的を掲げています。
- 財務諸表の透明性向上
従来のオペレーティング・リースは、多額の支払い義務があるにもかかわらず貸借対照表に計上されず、「隠れた負債」と見なされることがありました。新基準では、これらのリースを「使用権資産」および「リース負債」としてオンバランス化することで、企業の財政状態をより忠実に財務諸表へ反映させることを目指します。 - 投資家への情報提供の充実
リース契約の実態を財務諸表に表示することで、投資家は企業の設備投資や資金調達の状況をより正確に把握できるようになります。これにより、企業価値評価や信用力分析の精度が向上し、適切な投資判断に資することが期待されます。 - 国際的な比較可能性の確保
IFRS採用国や米国との会計基準の差異を解消することで、海外の競合他社との財務比較が容易になります。これは、海外投資家からの資金調達やM&A戦略においても重要な要素となります。
新基準の適用時期はいつから?対象となる企業
新リース会計基準への対応を計画する上で、まず自社がいつから、どの範囲で適用対象となるのかを正確に把握することが不可欠です。公開草案によると、適用時期と対象企業は以下の通りです。
適用時期は、原則として2026年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からの強制適用となります。ただし、準備が整った企業はそれ以前のタイミングで早期適用することも認められています。
| 適用区分 | 適用開始時期 |
|---|---|
| 原則適用(強制) | 2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から |
| 早期適用(任意) | 2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から |
対象となる企業は、上場企業およびその子会社・関連会社、会社法上の大会社などが主となります。重要なのは、この基準が連結財務諸表だけでなく、単体財務諸表にも適用されるという点です。したがって、非連結の子会社や単体決算のみの企業であっても、大会社に該当する場合は対応が必要となります。自社が適用対象に含まれるかどうか、早めに確認しておきましょう。
ここが変わる!新リース会計基準と現行基準の主な違い
2026年4月以降に開始する事業年度から適用される新リース会計基準は、これまでのリース会計実務を根底から変える大きな変更です。特に、これまで費用処理(オフバランス)が可能だったオペレーティング・リースが原則として資産計上(オンバランス)される点が最大の違いです。ここでは、新旧基準の具体的な相違点を詳しく見ていきましょう。
まずは、現行基準と新基準の主な違いを一覧で確認します。
| 項目 | 現行のリース会計基準 | 新リース会計基準(公開草案) |
|---|---|---|
| 会計処理モデル | 二重モデル(デュアルモデル) ・ファイナンス・リース:オンバランス ・オペレーティング・リース:オフバランス | 単一モデル(シングルモデル) ・原則すべてのリースをオンバランス |
| リースの分類 | ファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類 | 原則として分類を廃止 (短期・少額リースを除く) |
| 対象となるリース | ファイナンス・リース契約 | 短期・少額リースを除くすべてのリース契約 |
| B/S計上 | 【ファイナンス・リース】 リース資産・リース債務を計上 | 【原則すべてのリース】 使用権資産・リース負債を計上 |
| P/L計上 | 【ファイナンス・リース】 減価償却費・支払利息 【オペレーティング・リース】 支払リース料 | 【原則すべてのリース】 減価償却費・支払利息 |
すべてのリースを資産計上する「単一モデル」へ
新リース会計基準における最も本質的な変更点は、会計処理モデルが「単一モデル(シングルモデル)」に統一されることです。
現行基準では、リース契約をその経済的実態に応じて「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2種類に分類し、それぞれ異なる会計処理を行う「二重モデル(デュアルモデル)」が採用されています。ファイナンス・リースは資産・負債として貸借対照表(B/S)に計上(オンバランス)しますが、オペレーティング・リースは賃貸借処理として費用計上するのみでB/Sには計上されません(オフバランス)。
これに対し、新基準ではこの区別を原則として撤廃。短期リースや少額リースといった一部の例外を除き、すべてのリース契約について資産と負債を計上することになります。これは、国際的な会計基準であるIFRS第16号「リース」と同様のアプローチであり、企業の財務状況をより忠実に表現し、投資家など社外の利害関係者に対する比較可能性を高めることを目的としています。
「使用権資産」と「リース負債」という新たな概念
すべてのリースを原則オンバランス化するにあたり、新たな勘定科目として「使用権資産」と「リース負債」が登場します。これまでオペレーティング・リースとして処理していた契約についても、これらの科目を用いてB/Sに計上する必要が出てきます。
- 使用権資産:リース契約に基づき、原資産(リース対象の物件や設備など)を一定期間使用する「権利」を資産として認識したものです。B/Sの資産の部に計上されます。
- リース負債:将来にわたって支払うべきリース料総額のうち、未払い分を現在価値に割り引いて算出した金額です。B/Sの負債の部に計上されます。
この変更により、これまでオフバランスだったコピー機やPC、不動産(オフィス賃借)などのオペレーティング・リース契約もB/Sに計上されるため、多くの企業で総資産と負債が同時に増加することになります。これは自己資本比率や負債比率といった財務指標にも大きな影響を与える可能性があります。
オペレーティングリースとファイナンスリースの区別が原則廃止
前述の通り、新基準では会計処理の前提となるリースの分類が大きく変わります。現行基準では、リース契約が実質的に資産の売買に近いかどうかを判断するため、「所有権移転条項の有無」や「リース期間が耐用年数に占める割合(75%基準)」、「リース料総額の現在価値が資産の購入価額に占める割合(90%基準)」といった形式的な基準を用いてファイナンス・リースかオペレーティング・リースかを判定していました。
新基準では、このようなファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区別が原則として廃止されます。これにより、経理担当者は契約ごとに複雑な判定を行う必要がなくなります。その代わり、「どの契約が新基準の対象となるリースに該当するのか」を特定することが、新たな実務上の重要ポイントとなります。具体的には、資産を使用する権利が顧客に移転し、その対価を支払う契約は、原則としてすべて新基準の適用対象と捉える必要があります。
経理担当者がやるべき新リース会計基準の実務対応5ステップ
2026年4月1日以後開始する事業年度からの適用が予定されている新リース会計基準。影響範囲が広く、準備に時間を要するため、経理担当者は計画的に実務対応を進める必要があります。ここでは、新基準の適用に向けて企業が具体的に取り組むべき実務を5つのステップに分けて、詳細に解説します。
ステップ1 対象となるリース契約の網羅的な把握
新リース会計基準への対応は、まず社内に存在するすべてのリース契約を正確に洗い出すことから始まります。これまでのオペレーティングリースはオフバランス処理されていたため、契約管理が各事業部門に委ねられ、経理部門が一元的に把握できていないケースが少なくありません。新基準ではこれらの契約も資産・負債計上の対象となるため、網羅的な把握が極めて重要です。
具体的には、経理部門が管理する契約台帳だけでなく、以下の情報からもリース契約の存在を洗い出す必要があります。
- 各事業部門が保管する契約書(不動産賃貸借契約、車両リース契約、複合機・PC等のレンタル契約など)
- 固定資産台帳や償却資産税申告書
- 毎月定額で支払いが発生している取引の請求書や支払依頼書
- 取締役会議事録や稟議書
洗い出した契約については、新基準の定義に基づき「リース」に該当するかどうかを判定します。「識別された資産」を「一定期間にわたり支配して使用する権利」を移転する契約がリースに該当します。サービス契約との区別が難しいケースもあるため、契約内容を慎重に検討し、対象範囲を確定させることが最初の重要なステップとなります。
ステップ2 リース料とリース期間の算定
リース契約を特定したら、次に会計処理の基礎となる「リース料」と「リース期間」を算定します。これらは使用権資産とリース負債の計算に直接影響するため、正確に決定しなければなりません。
リース料の算定
リース負債の測定に含めるリース料は、リース期間にわたって借手が貸手に支払う金額です。具体的には、以下のものが含まれます。
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 固定リース料 | 契約で定められた固定の支払額。免責期間のリース料も実質的に固定であるため含めます。 |
| 変動リース料 | 指数やレート(例:消費者物価指数、市場金利など)に応じて変動する部分。当初はリース開始日の指数やレートで算定します。 |
| 残価保証額 | 借手が保証する資産の残存価額。 |
| 購入オプションの行使価格 | 借手が行使することが合理的に確実である購入オプションの行使価格。 |
| 解約違約金 | リース期間が借手による解約オプションの行使を反映している場合に支払う違約金。 |
一方で、物件の維持管理費用などの非リース要素(サービス部分)の対価は、原則としてリース料から除外する必要があります。ただし、実務上の負担を考慮し、非リース要素を分離せずにリース料に含めて会計処理することも認められています。
リース期間の算定
リース期間は、借手が原資産を使用する権利を有する「解約不能期間」に、以下の期間を加えて決定します。
- 借手が行使することが合理的に確実である延長オプションの対象期間
- 借手が行使しないことが合理的に確実である解約オプションの対象期間
「合理的に確実」かどうかの判断は、契約や資産に関連する事実と状況をすべて考慮して行います。例えば、解約すると多額のペナルティが発生する場合や、その資産が事業活動に不可欠である場合などは、延長オプションを行使したり、解約オプションを行使しなかったりすることが「合理的に確実」と判断される可能性が高まります。
ステップ3 使用権資産とリース負債の計算方法
リース料とリース期間が確定したら、いよいよ新基準の根幹である「使用権資産」と「リース負債」の金額を計算します。
リース負債の計算
リース負債は、リース開始日において未払であるリース料総額を、リースの割引率で割り引いて算定した現在価値です。
計算式: リース負債 = リース料総額の現在価値
ここで用いる「割引率」は、原則として「貸手の計算に含められている利率」を使用します。しかし、この利率を借手が容易に算定できないケースが多いため、その場合は借手の「追加借入利子率」を使用します。追加借入利子率とは、借手が同様の期間、同様の担保で、使用権資産と同程度の価値の資産を取得するために必要な資金を借り入れるとした場合に適用されるであろう利率を指します。
使用権資産の計算
使用権資産は、基本的にリース負債の当初測定額に、借手が支払った付随費用などを加算して計算します。
計算式: 使用権資産 = リース負債の当初測定額 + 前払リース料 + 当初直接費用 – リース・インセンティブ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| リース負債の当初測定額 | 上記で計算したリース料総額の現在価値。 |
| 前払リース料 | リース開始日以前に支払ったリース料。 |
| 当初直接費用 | リース契約を締結するために追加的に発生した費用(仲介手数料など)。 |
| リース・インセンティブ | 貸手から受領した金銭(フリーレント期間の提供などを含む)。資産計上額から控除します。 |
ステップ4 会計処理と具体的な仕訳例
算出した使用権資産とリース負債を基に、具体的な会計処理を行います。ここでは、リース開始時と決算時の仕訳例を見ていきましょう。
(例)リース期間:5年、年間リース料:100万円(後払い)、割引率:2%、リース負債の現在価値:471万円、使用権資産:471万円(付随費用等はないものとする)
リース開始時の会計処理
リース開始日に、使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 使用権資産 | 4,710,000 | リース負債 | 4,710,000 |
決算時の会計処理
決算時には、使用権資産の減価償却と、リース負債に係る利息の計上が必要になります。従来のオペレーティングリースのように支払リース料を費用計上するのではなく、減価償却費と支払利息を計上する点が大きな違いです。
1. リース料支払時(1年目末)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| リース負債 | 1,000,000 | 現金預金 | 1,000,000 |
2. 決算整理仕訳(1年目末)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払利息 | 94,200 | リース負債 | 94,200 |
| 減価償却費 | 942,000 | 使用権資産減価償却累計額 | 942,000 |
※支払利息:期首リース負債残高 4,710,000円 × 割引率 2% = 94,200円
※減価償却費:使用権資産 4,710,000円 ÷ リース期間 5年 = 942,000円(定額法の場合)
ステップ5 注記情報の準備
新リース会計基準では、財務諸表利用者への情報提供を充実させる観点から、開示要求が大幅に増加します。会計処理と並行して、注記に必要な情報を収集・整理する体制を構築することが不可欠です。
開示は、定性的な情報と定量的な情報に大別されます。
定性的な注記情報
企業のリース活動の概要を理解するための情報です。以下のような項目が含まれます。
- リースの内容(リース資産の種類、将来のキャッシュ・アウトフローに影響を与える可能性のある契約条件など)
- 変動リース料や延長・解約オプションに関する情報
- 残価保証に関する情報
- 重要な判断や見積りの内容
定量的な注記情報
財務諸表に計上された金額の内訳や将来の支払予定額など、具体的な数値情報です。
- 使用権資産の資産区分ごとの期末残高や増減明細
- リース負債の期末残高や増減明細
- 当期に損益認識したリース関連の費用(使用権資産の減価償却費、リース負債の利息費用など)
- リース負債の返済予定額(マチュリティ分析)
- リースからのキャッシュ・アウトフロー総額
これらの多岐にわたる注記情報を正確かつ効率的に作成するためには、早期のデータ収集と管理方法の確立が必須となります。特に、リース負債の返済予定額などは、個々の契約情報を集約しなければ作成できないため、計画的な準備が求められます。
新リース会計基準が財務諸表や経営指標に与える影響
新リース会計基準の適用は、単なる会計処理の変更に留まりません。これまでオフバランス(貸借対照表に計上されない)であったオペレーティングリースが原則としてオンバランス(貸借対照表に計上される)となるため、企業の財務諸表の見え方や、それに基づいて算出される経営指標に大きな影響を及ぼします。ここでは、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/F)のそれぞれに与える具体的な影響を解説します。
貸借対照表(B/S)への影響
新リース会計基準の最も大きなインパクトは、貸借対照表(B/S)に現れます。これまで費用処理のみであったオペレーティングリース契約について、新たに「使用権資産」と「リース負債」を計上する必要があるためです。
具体的には、借方(資産の部)に「使用権資産」が、貸方(負債の部)に「リース負債」がそれぞれ計上されます。これにより、総資産と総負債が同額ずつ増加し、バランスシートの規模が拡大します。
| 項目 | 現行基準(オペレーティングリース) | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| 資産の部 | 計上なし | 「使用権資産」を計上(総資産が増加) |
| 負債の部 | 計上なし | 「リース負債」を計上(総負債が増加) |
この資産・負債の両建て計上は、財務の健全性を示す経営指標に直接的な影響を与えます。
- 自己資本比率の低下
自己資本比率(=自己資本 ÷ 総資産)の分母である総資産が増加するため、自己資本比率は低下する傾向にあります。金融機関からの融資審査などで重視される指標であるため、注意が必要です。 - 負債比率の上昇
負債比率(=負債合計 ÷ 自己資本)は、分子である負債合計が増加するため、上昇します。
このように、実質的な財務内容に変化がなくても、指標上は財務健全性が悪化したように見える可能性があるため、ステークホルダーへの丁寧な説明が求められます。
損益計算書(P/L)への影響
損益計算書(P/L)では、費用の計上方法と内訳が大きく変わります。現行基準では、支払リース料を「賃借料」などの科目で販売費及び一般管理費に計上するのが一般的でした。
新基準では、この支払リース料が「減価償却費」と「支払利息」の2つに分解されて計上されます。
| 項目 | 現行基準(オペレーティングリース) | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| 費用項目 | 支払リース料(主に販管費) | 減価償却費(営業費用) + 支払利息(営業外費用) |
| 費用計上パターン | リース期間中、ほぼ定額 | リース期間の初期に大きく、徐々に減少(費用前倒し計上) |
支払利息はリース負債の残高をもとに計算されるため、残高が大きいリース期間の初期ほど費用が大きく計上され、期間の経過とともに減少していきます。この結果、リース期間トータルでの費用総額は変わりませんが、利益が期間前半は圧迫され、後半は改善するという影響が出ます。
また、この費用構造の変化は、EBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)などの経営指標にも影響します。新基準では、これまで営業費用であった支払リース料が、EBITDAの算出上控除対象となる減価償却費と支払利息に変わるため、見かけ上のEBITDAは増加することになります。これは企業価値評価(バリュエーション)にも影響を与える重要なポイントです。
キャッシュフロー計算書(C/F)への影響
キャッシュフロー計算書(C/F)では、リース料支払いの表示区分が変更されます。現金の支出という事実は変わりませんが、その性質の捉え方が変わるためです。
現行基準では、リース料の支払額の全額が「営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)」のマイナス項目として扱われていました。
新基準では、リース料の支払いが「リース負債の元本返済部分」と「利息の支払部分」に分けて考えられます。そして、元本返済部分は「財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)」のマイナス、利息支払部分は原則として「営業CF」のマイナスとして表示されます。
| 項目 | 現行基準(オペレーティングリース) | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| リース料支払額の区分 | 営業CFのマイナス | 元本返済部分:財務CFのマイナス 利息支払部分:営業CFのマイナス |
| 営業CFへの影響 | リース料全額分が減少 | 利息支払分のみ減少し、現行より増加 |
| 財務CFへの影響 | 影響なし | 元本返済分が減少し、現行より悪化 |
この結果、企業の本来の事業活動による資金創出能力を示す営業CFは、これまでよりも良く見えるようになります。一方で、財務CFは悪化します。キャッシュフローの総額は変わりませんが、その内訳が変わることで、企業の財務活動に対する見方が変わる可能性がある点を理解しておく必要があります。
実務負担を軽減する簡便的な取扱いとは
新リース会計基準では、原則としてすべてのリース契約を使用権資産とリース負債として貸借対照表(B/S)に計上する必要があります。しかし、すべてのリース契約に対して厳密な会計処理を行うことは、経理担当者にとって膨大な実務負担となりかねません。そこで、実務上の負担を考慮し、重要性が乏しい特定のリースについては、資産計上をせずに従来通りの費用処理を認める簡便的な取扱いが用意されています。この例外的な処理を適切に活用することが、新基準へスムーズに対応する鍵となります。ここでは、その代表的な2つの取扱いである「短期リース」と「少額リース」について、具体的な要件と会計処理を詳しく解説します。
短期リースの取扱い
短期リースとは、その名の通りリース期間が短いリース契約を指し、新リース会計基準の適用にあたって簡便的な会計処理が認められています。
短期リースに該当する場合、借手は使用権資産とリース負債を認識せず、支払うリース料をリース期間にわたって定額法などの基礎に基づいて費用として処理することができます。これは、現行のオペレーティングリースと同様の会計処理であり、経理業務の負担を大幅に軽減します。
ただし、どのリースが短期リースに該当するかは、慎重な判断が必要です。具体的な要件は以下の通りです。
| 項目 | 短期リースの要件 |
|---|---|
| リース期間 | リース開始日時点において、リース期間が12ヶ月以内であること。 |
| 購入オプション | 購入オプションが含まれるリースは、原則として短期リースの対象外となります。ただし、その購入オプションを行使することが合理的に確実でない場合は、短期リースに含めることができます。 |
| 延長オプション | 借手が延長オプションを行使することが合理的に確実である場合、その延長期間を含めてリース期間を算定する必要があります。その結果、12ヶ月を超える場合は短期リースには該当しません。 |
例えば、イベントのために3ヶ月間だけ機材をレンタルする場合や、繁忙期対策で6ヶ月間だけ倉庫を借りる場合などが典型的な短期リースに該当します。この簡便法を適用するかどうかは、リース契約の種類ごと(例えば、不動産、車両など)に選択することができます。
少額リースの取扱い
少額リースとは、リース対象となる資産そのものの価値が低いリースを指します。短期リースと同様に、簡便的な会計処理が認められており、実務上の負担を軽減する重要な選択肢となります。
少額リースの簡便的な取扱いを適用する場合も、使用権資産とリース負債を計上せず、リース料を発生時に費用として処理することが可能です。これにより、多数存在する少額な備品等のリース管理業務を大幅に効率化できます。
少額リースかどうかの判定には、国際的な会計基準(IFRS第16号)と日本の会計基準案で示されている金額基準が参考になります。特に重要なのは、契約総額ではなく、リース資産そのものの価値で判断するという点です。
| 項目 | 少額リースの要件 |
|---|---|
| 金額の目安 | 新品であった場合の価額が、国際的な基準では5,000米ドル相当額以下、日本の実務対応報告公開草案では300万円以下であることが目安とされています。 |
| 判断単位 | リース契約単位ではなく、個々の「原資産」単位で判断します。例えば、1台あたりの新品価額が15万円のPCを20台(契約総額300万円)リースする場合、1台あたりの価額が基準を下回るため、少額リースに該当します。 |
| 適用方針 | 短期リースとは異なり、少額リースの簡便法を適用するかどうかは、企業全体の方針として決定する必要があります。資産の種類ごとに選択することはできません。 |
オフィスで利用するコピー機、PC、タブレット、事務用デスク、電話機などが少額リースの典型例です。これらの簡便的な取扱いを正しく理解し、自社の会計方針として適切に設定することが、新リース会計基準への効率的な対応を実現する上で不可欠と言えるでしょう。
効率的な対応にはシステム導入が不可欠 プロシップの活用
新リース会計基準への対応は、対象契約の特定から資産・負債の計算、会計処理、注記作成まで多岐にわたり、経理担当者の業務負荷を大幅に増大させます。特に、これまで資産計上してこなかったオペレーティングリースを大量に抱える企業にとって、その影響は甚大です。
これらの複雑な業務をExcelやスプレッドシートで手作業管理しようとすると、膨大な工数がかかるだけでなく、計算ミスや管理漏れといったヒューマンエラーのリスクが常に付きまといます。そこで、効率的かつ正確な対応を実現する鍵となるのが、リース管理に特化したシステムの導入です。本章では、Excel管理の限界とシステム化のメリットを整理し、豊富な実績を持つプロシップ社のシステム活用について解説します。
Excel管理の限界とシステム化のメリット
新リース会計基準の適用にあたり、従来のExcelによる管理を継続することには多くの課題が潜んでいます。システムを導入することで、これらの課題を根本から解決し、より高度な管理体制を構築できます。
Excel管理の主な課題と、システム化によるメリットを比較してみましょう。
| 課題項目 | Excel管理における限界・リスク | システム化による解決策・メリット |
|---|---|---|
| 業務の属人化 | 複雑な計算式やマクロを組んだ担当者しかメンテナンスできず、異動や退職で業務がブラックボックス化する。 | 標準化された業務プロセスをシステムに集約。誰が担当しても同じ品質で業務を遂行でき、業務の標準化と引き継ぎの円滑化を実現します。 |
| ヒューマンエラー | 手入力やコピー&ペーストによるミス、計算式の誤り、バージョン管理の失敗など、人為的ミスの発生リスクが高い。 | 契約情報に基づく計算や仕訳生成を自動化。入力チェック機能もあり、ヒューマンエラーを抜本的に削減し、データの正確性を担保します。 |
| データの一元管理 | 契約書はPDF、管理台帳はExcelなど情報が散在し、対象契約の網羅的な把握や最新情報の維持が困難。 | リース契約に関するあらゆる情報(契約内容、関連書類、会計情報など)を一元管理。常に最新かつ正確な情報にアクセスできます。 |
| 監査・内部統制 | 計算根拠の提示や変更履歴の追跡が難しく、監査対応に多大な工数がかかる。アクセス制御も不十分で統制上のリスクがある。 | 誰が・いつ・何を更新したかの操作ログを自動で記録。権限設定も可能で、内部統制を強化し、監査にも迅速かつ正確に対応できます。 |
| 法改正への対応 | 将来的な基準の変更や解釈の更新があった場合、関連するすべてのExcelファイルの修正が必要となり、対応が追いつかない可能性がある。 | システムベンダーが法改正に合わせてプログラムを更新。ユーザーは常に最新の会計基準に準拠した環境で業務を行えます。 |
プロシップが解決する新リース会計基準の課題
リース管理システムの導入を検討する上で、固定資産管理・リース資産管理の分野で国内トップクラスのシェアを誇る株式会社プロシップのソリューションは、有力な選択肢となります。同社のパッケージシステム「ProPlus(プロプラス)」は、新リース会計基準の複雑な要件に完全対応しており、多くの企業の制度対応を支援してきた実績があります。
プロシップのシステムが、新リース会計基準の課題をどのように解決するのか、具体的な機能を見ていきましょう。
契約情報の網羅的管理と適正な計算
新基準対応の第一歩は、社内に存在するすべてのリース契約を網羅的に把握することです。ProPlusでは、契約情報だけでなく、契約書のPDFファイルや関連書類も紐づけて一元管理できます。これにより、管理台帳からの漏れを防ぎ、監査時にも迅速に根拠資料を提示できます。さらに、入力された契約情報をもとに、使用権資産とリース負債の複雑な現在価値計算、減価償却費、支払利息などを自動で算出。変更契約や中途解約といったイレギュラーな事象にもパラメータ設定で柔軟に対応可能です。
仕訳の自動生成と会計システム連携
計算された金額に基づき、新基準に準拠した仕訳データを自動で生成します。これにより、手作業による仕訳起票の工数を大幅に削減し、転記ミスを防ぎます。生成された仕訳データは、SAP、Oracle EBSといった主要なERPパッケージや各種会計システムとスムーズに連携させることができ、決算業務全体の効率化に大きく貢献します。
財務諸表への影響シミュレーションと注記作成
新基準の適用が自社の財務諸表にどの程度のインパクトを与えるかは、経営層にとっても重要な関心事です。ProPlusには、新基準を適用した場合の貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)への影響額を事前にシミュレーションする機能が搭載されています。これにより、経営判断に必要な情報を迅速に提供できます。また、開示要求が詳細化される注記情報についても、システム内のデータから必要な情報を集計し、作成を強力に支援。決算短信や有価証券報告書の作成業務の負荷を大幅に軽減します。
豊富な導入実績と万全のサポート体制
プロシップは、IFRS第16号の先行対応を含め、長年にわたり多くの企業のリース会計対応を支援してきました。その豊富な導入実績に裏打ちされたノウハウは、お客様固有の課題に対する最適な解決策の提案に活かされています。会計基準に精通した専門コンサルタントによる導入支援から運用後の保守サポートまで、万全の体制で企業のスムーズな新基準移行をバックアップします。
まとめ
本記事では、2026年度初めからの適用が見込まれる新リース会計基準について、経理担当者が押さえるべき実務対応のポイントを解説しました。新基準の最大の結論は、これまでオフバランスであったオペレーティングリースを含め、原則すべてのリース契約を資産・負債として計上する「単一モデル」へ移行する点です。これにより企業の貸借対照表は大きく変動し、自己資本比率などの経営指標にも影響が及ぶため、早期の準備が不可欠となります。
経理担当者には、全社的なリース契約の洗い出しから、使用権資産とリース負債の複雑な計算、新たな会計処理、そして詳細な注記情報の作成まで、多岐にわたる実務が求められます。これらの膨大な作業をExcelで管理するには限界があり、ヒューマンエラーや属人化を招くリスクが伴います。そのため、プロシップに代表されるようなリース資産管理システムを導入し、業務を標準化・効率化することが、新基準へスムーズに対応するための最も確実な結論と言えるでしょう。計画的に準備を進め、万全の体制で適用開始を迎えましょう。
